なるほど栄養学 現代人のカラダ事情<29>

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胃や肝臓の不調で欠乏

細胞の健康を維持 ビタミンB12

 ビタミンB12は、DNAの生合に関与し、すべての細胞の健康を維持するために必須の栄養素です。赤血球のDNA合成にも欠かせないコバルトを含むため、「赤いビタミン」とも呼ばれています。

 その他にも、タンパク質の合成、糖質や脂質、アミノ酸などの代謝、幼児の発育促進、精神安定や集中力向上にも関与しています。不足すると、やる気がでない、集中力の欠如、記憶力の低下を招き、さらに悪化すると運動神経の低下、手足のしびれなど末しょう神経の症状が出てきます。

 ビタミンB12は、微生物によって作られる栄養素なので、動物性食品、特にレバーや牛肉、豚肉、卵、牛乳、チーズに多く含まれ、植物性食品の中では、海藻類に微量ながら活性型のビタミンB12が含まれている程度です。食傾向が菜食の方は、摂取不足となることがあるため注意が必要です。

 ビタミンB12が腸で吸収されるには、胃液に含まれる「内因子」と呼ばれる物質が必要です。ですから、胃切除、萎縮性胃炎、老化などで内因子の分泌が低下すると吸収が悪くなります。

 ビタミンB12は肝臓で5年から7年貯蔵されます。肝臓に障害がある方は、貯蔵しておくことができずに欠乏を招きます。妊娠、甲状腺機能亢進、アルコール中毒、腫瘍などの場合も、普段よりビタミンB12が多く必要です。

 特に、赤血球の大きさに異常が生じることで頭痛、めまい、吐き気、動悸・息切れなどの症状を引き起こす巨赤芽救性貧血(悪性貧血)はビタミンB12不足が関係する典型的な病気です。

 また、ビタミンB12はミエリン鞘(神経細胞を覆っている脂質)の生合成に関与しているため、その不足は、しびれや知覚障害などの神経障害が起きると言われています。手足のしびれなど末しょう神経の症状から、お年寄りの場合は、ビタミンB12の欠乏によって起こる症状がパーキンソン病と間違われることもあります。

 ビタミンB12はカルシウム吸収と骨密度上昇にも働いています。そのため、サプリメントで効率よく補給する場合には、カルシウムと一緒に摂取することをお勧めします。

 こんな症状がある人は特に摂取を!

 ・悪性貧血
 ・胃を摘出した人
 ・老人の貧血
 ・神経痛、神経炎、しびれ
 ・脂漏性皮膚炎、にきび
 ・神経過敏
 ・昼夜逆転(ふくろう症候群)
 ・統合失調症
 ・骨粗しょう症
 ・糖尿病による手足の神経の痛み、こむらがえり、網膜症
 ・筋無力症、筋萎縮症(ビタミンEと一緒に)

 

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