なるほど栄養学 現代人のカラダ事情<30>

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胎児の発育に必須

妊婦に最も大切な「葉酸」

 「葉酸」は、ホウレンソウから発見されたビタミンB群の一種です。造血や神経細胞の生成などにかかわり、特に胎児の発育には欠かすことのできない栄養素です。

 また、動脈硬化や認知症のリスクを減らすビタミンとしても注目されています。今回から2回にわたり、葉酸について説明します。

葉酸は、妊娠の可能性のある女性にとって、最も優先すべき栄養素です。葉酸が不足すると、胎児の中枢神経の発育が上手くいかず、「神経管閉鎖障害(二分脊椎症)」という先天異常が起こりやすくなります。厚生労働省では、2000年に「神経管閉鎖障害のリスクを低減させるため、妊娠の1カ月以上前から妊娠後3カ月までの間、食品からの葉酸摂取に加え、栄養補助食品から一日400μgの葉酸を取りましょう」と通知しました。

 しかし、実際の日本人女性の葉酸摂取量平均は、20代では250μg、30代では247μgであると報告されています。成人女性の推奨量240μgは満たしていますが、妊婦に必要な400μgには達していないため、妊娠を予定する女性の多くは葉酸不足だといえます。食事だけでは厳しく、栄養吸収率も不明なため、葉酸を積極的に取る場合は質の良いサプリでの補給がおすすめです。

 アメリカやカナダなど世界52カ国では、国を挙げてパンや米などの穀類に葉酸を添加し、胎児の神経管閉鎖障害の発生頻度は著しく減少しました。

 しかし、日本の発生率は増加傾向にあることが分かっています。これは、葉酸の認知度が低いことが一番の原因でしょう。また、胎児の中枢神経が形成される、受精後1~2週目から葉酸は必要なのですが、妊娠に気づいたときにはすでに受精後1カ月以上が経過していることも多いのが現状です。

 神経管閉鎖障害を防ぐには、葉酸だけでなくビタミンB12も必要です。また、若い女性のダイエット志向は、葉酸やビタミンB12以外にも、各種栄養素の不足を招き、出生時に体重が2500g未満の「低出生体重児」の要因となることも問題視されています。バランスの良い食生活を心がけましょう。

 葉酸を多く含む食品(100gあたり)

 <肉類>
 ・牛レバー1000μg
 ・豚レバー810μg

 <魚介類>
 ・ホタテ貝87μg
 ・カキ40μg

 <野菜>
 ・菜の花340μg
 ・枝豆320μg
 ・モロヘイヤ250μg
 ・ホウレンソウ210μg
 ・スイートコーン95μg

 <果物>
 ・イチゴ90μg
 ・アボカド84μg

 

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