なるほど栄養学 現代人のカラダ事情<19>

が投稿

女性の6割が鉄欠乏

本当は怖い「鉄」不足

 鉄が不足すると貧血になることはなんとなくわかっていますが、その本当の怖さを知っていますか?今回は鉄不足の実態を紹介します。

 私たちが生きる上で、一瞬も酸素なしでは生きていけません!酸素は、血液中のヘモグロビンと結合して脳をはじめ、全身の細胞すみずみまで滞りなく運ばれます。

そのヘモグロビンは、ヘムという「鉄」を含む色素と、グロブリンというタンパク質からできています。鉄は酸素と結びつきやすい性質があり、これによりヘモグロビンはたくさんの酸素を運搬できるのです。ヘモグロビンの材料である「鉄」が不足し、その働きが落ちてしまうのが貧血です。

 鉄が不足すると結果的にヘモグロビンも不足するため、体内に酸素が行き渡らなくなります。

疲労感や息切れなど、筋肉の酸素不足を原因とする症状のほか、記憶力や学習能力の低下など、脳機能と関係する症状も現れます。脳神経は鉄不足に敏感なため、さまざまな悪影響が出てきます。特に代謝が活発でエネルギーを多く必要とする乳幼児期や小児期、思春期から青年期は身体の基礎ができる大切な時期なので、鉄不足に十分に配慮しなければいけません。

 また、妊娠時の低ヘモグロビンは胎児の発育遅延、早産や未熟児との関連が報告されています。

 さらに最近では、うつ症状や情緒不安定などの精神状態と鉄不足との関係も指摘されつつあります。

 現代では、ライフスタイルや環境の変化により、鉄の摂取量が減少しています。特に女性はダイエットのために鉄の吸収率の良い肉や魚などを避け、吸収率の低い野菜や豆類、海藻類をヘルシーだともてはやす傾向にあります。そのバランスの悪さも要因となり、実に6割の女性が潜在的鉄欠乏症にあると言われています。女性は1回の月経でおよそ30㎎(豚レバーで言うと約300g分)もの鉄を喪失します。積極的な鉄補給を心がけましょう。

 一方、男性の鉄欠乏症は重篤な疾患や消化器の出血を疑いますので、軽視せず、見落とさないようにしましょう。次回はもう少し詳しく「鉄」について掘り下げていきます。

 貧血チェックしてみよう!
 貧血は、自覚症状があまりないため気がつきにくいもの。日本赤十字社の調べによると、献血者成人女性の20%は献血不適、そのうちの80%の人が鉄欠乏症貧血だそうです。

 ▢ 立ちくらみ、めまい、耳鳴りがする
 ▢ 疲れやすい
 ▢ 顔色が悪い
 ▢ 風邪をひきやすい
 ▢ 頭痛、頭重になりやすい
 ▢ 注意力の低下、イライラしやすい
 ▢ のどの不快感
 ▢ 洗髪時、髪が抜けやすい
 ▢ 神経過敏
 ▢ 肩こり、腰痛、背部痛
 ▢ 便秘や下痢をしやすい
 ▢ 体を動かすと動悸や息切れがする
 ▢ くしゃみ、鼻水、鼻づまり
 ▢ 口角、口唇炎、舌のしびれと赤味
 ▢ 月経異常がある

 

18.卵とコレステロール値の誤解 | 目次 | 20.鉄不足の指標「フェリチン」