なるほど栄養学 現代人のカラダ事情<20>

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眠気や耳鳴りも貧血?

鉄不足の指標「フェリチン」

 前回に引き続き、「鉄」について話します。

 私たちの身体には、鉄が3~4g常備されています。身体の鉄の3分の2が赤血球内のヘモグロビンにあり、酸素の運搬役として働いています。残りの大部分はフェリチン(貯蔵鉄)というカタチで腸や肝臓、ひ臓、脳に蓄えられています。鉄はとても大切な栄養素なのでぇ必要が満たされるとフェリチンとして貯蔵され、ヘモグロビン合成の鉄が足りない場合はその「鉄の貯金」であるフェリチンを取り出して使うのです。

 通常、貧血の診断基準としては赤血球内のヘモグロビンが使われますが、赤血球中の鉄はよほど鉄欠乏が進行しない限り減ることがなく、早い段階からの鉄欠乏に気づくためには、貯蔵鉄であるフェリチンに注目する必要があります。フェリチン値が少なくなってくると、「貧血」と診断されなくてもさまざまな症状が現れてくることがあります。

 一般的に立ちくらみ、めまい、息切れなどが貧血の症状とみなされています。しかし、それだけではありません。鉄が不足すると酸素の運搬が滞ります。それで最も困るのは中枢神経(脳)です。酸素供給不足に陥り、けん怠感や頭痛、眠気や耳鳴り、食欲不振や集中力の低下などが起きます。また、全身の血液量が減少し、顔色が悪くなり、寒さにも敏感になります。髪がよく抜ける、あざができやすい、朝起きるのがつらいといった症状のある方は鉄欠乏の可能性があります。また、特に鉄の需要量が増える成長期の子どもや妊娠を希望する女性、そして妊婦さんは不足しがちなので注意してください。フェリチン値の測定により、欠乏はかなり早い段階で突き止めることができますが、通常の健康診断などでは数値は出てきませんので、気になる方は個人的に病院で血液検査をしてもらうことをおすすめします。たかが貧血と思われるかもしれませんが、生活の質を維持向上させるにはまず、貧血改善が大切なのです。

  鉄の重要が増える時期

 ①生後5ヶ月くらいまで
   母体から移行し、蓄えた鉄を消費する

 ②生後6か月から3歳くらいまで
   成長が著しく、鉄の需要も増大する

 ③成長期(12歳から20歳くらいまで)
   急激な成長、体重・身長の増加に伴い血液量も増加。
   初潮を迎えた女性はさらに血液を失うため、貧血になりやすい

 ④アスリート
   筋肉を動かすには、筋肉組織に酸素を運ぶヘモグロビンが大量に必要になる

 ⑤妊娠期
   胎児の成長に伴い、胎児の赤血球の合成及び母親の子宮形成や維持に大量のヘモグロビンが必要になる

 ⑥各種疾患
   子宮筋腫や悪性腫瘍などによる出血量の増加に伴い、需要量が増加する

 

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