なるほど栄養学 現代人のカラダ事情<15>

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体・脳・心にも影響

がん予防や改善に「脂質」!?

 一般的に「太る」と、敬遠されがちな脂質ですが、その量と種類を考えれば
コレステロールを下げたり、がんの改善や予防につながること、ご存知ですか?
 食べ物から取った脂質は、①細胞の成分に②体のエネルギー源③体の保護物質を形成する④皮膚の保護⑤脂溶性ビタミンの吸収を促進⑥ホルモンの材料-など、さまざまな働きをします。過剰に摂取すれば肥満や生活習慣病の原因になりますが、適量は必要ですから、過度に脂質を制限するダイエットはお勧めできません。

 脂質は、飽和脂肪酸(動物性の脂など)と不飽和脂肪酸(植物の油や魚油など)に大別されます。そして、不飽和脂肪酸の中でも、現在注目を集めているのが、「必須脂肪酸」です。これは、体内で作れない脂肪酸を指します。
 必須脂肪酸には「オメガ6系(n-6)」、「オメガ3系(n-3)」という2つのタイプがあります。

 大豆油やゴマ油などに多く含まれるオメガ6系の脂肪酸は、コレステロールを下げる効果があります。しかし、過剰に取ると肥満や動脈硬化を促進し、心筋梗塞や血栓、アレルギーなどのリスクを高めます。オメガ6系は、現代の食生活で過剰になりやすいので注意が必要です。

 オメガ3系の脂肪酸は、サンマやイワシなど、魚油に多く含まれています。血中の悪玉コレステロールを減らして善玉コレステロールを増やしたり、がんの発生や増殖を抑制する働きを持っています。脳梗塞、心筋梗塞、高脂血症、高血圧の改善にも効果が期待されます。アトピー性皮膚炎や花粉症などのアレルギー疾患は、オメガ6系の過剰摂取が影響していることが多いのですが、オメガ3系はその作用を抑制し、アレルギー症状を緩和させる働きもあります。

 人の母乳のみに含まれるDHAやEPAなども、オメガ3系の脂肪酸です。このことが人間がほかの動物より知的に進化した理由とも言われています。DHAは脳神経細胞に多く含まれており、うつや「キレる」など心の病気の改善につながるとの報告もあります。
 摂取する場合はオメガ3とオメガ6の比率が3対1の割合が望ましいでしょう。

 脂質の種類と食材

 〇飽和脂肪酸
  バターや生クリームなどの乳脂肪や、チョコレートや揚げ菓子などに多く含まれるパーム油、肉などに多い。過剰摂取している人が多いので、できるだけ控えたい脂質です。
 〇オメガ3系の不飽和脂肪酸
 魚油(サンマやイワシ、サバなど)やアマニ油、えごま油などに多く含まれます。しかし、脂肪の多い魚は、飽和脂肪酸も多いので摂り過ぎには注意しましょう。
 〇オメガ6系の不飽和脂肪酸
  大豆油やとうもろこし油、ゴマ油などの植物油に多く含まれます。

 ※他にもオリーブ油や新紅花油に多く含まれる「一価不飽和脂肪酸」という脂質もあります。摂取はほどほどに。

 

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