なるほど栄養学 現代人のカラダ事情<41>

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不足が過剰を招く!?

「カルシウム・パラドックス」とは

 近年、話題になっている「カルシウム・パラドックス」という言葉、耳にしたことがありますか?

 前回、お話しました通り、カルシウムは骨や歯だけでなく血液中にも存在し、さまざまな役割を果たしています。骨や歯などの細胞内と血液中で1対10000という比率になるように調整されており、常に血液中の濃度は一定に保たれています。

 カルシウムが不足すると、まず血液中のカルシウム濃度が低下します。すると、骨からカルシウムを溶かし、血液中の濃度を一定に保とうとする働きが起こります。慢性的なカルシウム不足が続くと、常にカルシウムが骨から溶け出し、皆さんもご存知の骨粗しょう症を招きます。

 しかし!その本当の怖さは、骨がもろくなることだけでなく、骨から過剰にカルシウムが溶かし出されることにあります。

 溶かし出されたカルシウムが血液中にあふれ、血管や脳、軟骨など体の各所に沈着すると、さまざまな病気のリスクを高めます。以前まで腎臓結石は、カルシウムの過剰摂取が原因と言われてきましたが、実際は逆で、カルシウムが不足することが原因だったのです!腎臓結石だけでなく、胆のう結石や膀胱結石、尿管結石などの原因になることもあります。

 このようにカルシウムの摂取不足が原因で、カルシウムが細胞内に増加することを、「カルシウム・パラドックス(逆説)」と言います。

 このことは、病気や老化と直結し特に女性は、閉経を境に女性ホルモンが減少した時期に起こりやすく、関節痛、肩こり、動脈硬化、高血圧などの症状を招きやすいことが分かっています。その他の症状は別表を参照ください。

 一般的なカルシウムの摂取目標量は一日最低600㎎と言われていますが、実際は1000㎎くらいは必要だと考えられています。特に成長期の子ども、妊婦や更年期の女性、老人、ストレスの多い方、高血圧や動脈硬化、糖尿病の方、肥満やリウマチ、そして食傾向が塩分やリンの過剰摂取の方などは、一日1200~1500㎎が必要と考えられています。次回は具体的な摂取方法について説明します。

 こんな症状を引き起こす!

 カルシウム摂取不足によって、細胞中のカルシウム濃度が高くなる「カルシウム・パラドックス」が進行すると、次のような問題が起こります。

 ① カルシウムが心臓の細胞にたまると、心不全が起こりやすい
 ② 動脈の細胞にたまると、動脈硬化や高血圧が起こりやすい
 ③ 関節にたまると、変形性関節症が起こりやすい
 ④ 早期起床時に手指関節のこわばり、痛みが起こりやすくなる
 ⑤ 神経細胞にたまると、伝達機能低下やアルツハイマーが起こりやすい
 ⑥ 腎臓の尿路にたまると、腎結石が起こりやすい

 

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