なるほど栄養学 現代人のカラダ事情<40>

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骨溶かし血中に補充

意外と知らない「カルシウム」

 ミネラルの中でも、一番多く体内に存在するカルシウム。今回は、骨や歯を作るだけではない、「働き者」な側面をご紹介しましょう。

 カルシウムは、身体の1.5~2%を占め、成人の身体(体重50kgの場合)には約1kgのカルシウムが存在します。そのうち、99%は骨や歯に存在します。

 残りの1%は、細胞や血液などに存在し、①筋肉や毛細血管の収縮、弛緩(しかん)②心臓の正常な機能維持③神経伝達物質の分泌を促進④アレルギーを抑える抗ヒスタミン作用⑤有毒物質(鉛、水銀、カドミウム、タンニン酸など)の排泄⑥血液凝固促進作用⑦ホルモン分泌や神経の安定-など多彩な働きをしています。

 生命維持に欠かせない様々な役割があるため、血液中のカルシウムが不足すると、骨を溶かし血液中の必要量を補充します。不足が続くと、骨折や骨粗しょう症を引き起こします。これは他の栄養素にはない特別な仕組みで、カルシウムが人間の生命を維持していくために最重要な物質であることを裏付けています。

 しかし、カルシウム不足は短期間でははっきりとした自覚症状が出ないため、異常に気付いた時には取り返しのつかない状態になっていることも少なくありません。

 骨が弱くなるだけでなく、自律神経のバランスが崩れたり、高血圧や脳卒中、不整脈や心筋梗塞、筋肉けいれんを引き起こします。うつや記憶障害、不眠やイライラなどの神経症状や、かゆみや鼻水、喘息などアレルギー症状を起こしやすいことも分かっています。

 現在では日本人も乳製品を食べるようになり、昔ほど摂取不足は行らなくなってきていますが、まだ十分ではありません。カルシウムを含む食品は吸収率に差があり、乳製品で約40%、小魚で約30%、野菜で20%弱と言われています。

 また、図のような要因で吸収率は変動し、意識して食事から取っていても、成長期や妊娠・授乳中の方、閉経した方、ストレスの多い方、ピロリ菌感染者、萎縮胃の方、高齢者はカルシウム不足に陥っていることもあるため、気になる方は食事はもちろんですが、サプリメントで補うこともお勧めします。

 吸収率を変動させる要因

 カルシウムの吸収率は、体内のカルシウム量によって変動します。欠乏時には一般的に吸収が増加し、過剰の際は低下します。また、以下の要因でも変化します。

 ◆吸収率を促進する要因
 ・ビタミンD(食事や日光による)と一緒に摂取する
 ・高アミノ酸やベプタイド、乳糖食と一緒に摂取する

 ◆吸収率を抑制する要因
 ・情緒不安定
 ・加齢や老化
 ・H2ブロッカーなどの服薬
 ・高リン、高食物繊維、高脂肪食との摂取
 ・高フィチン酸食との摂取

 

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