メタボ・神経疾患にも
ビタミン様物質「イノシトール」
細胞の正常な発育に不可欠なイノシトールは、生体内でブドウ糖(グルコース)から生合成されます。体内で十分量が合成される物質は、ビタミンと似た重要な働きをしていても、一般のビタミンとは区別され「ビタミン様物質」と呼ばれます。
イノシトールは、ビタミンB様成分を含み、発育に不可欠な栄養素でビタミンB群の仲間として扱われてきました。
以前から「脂肪肝」を防ぐ栄養素として注目を集めていた栄養素でもあり、摂食由来の脂肪肝の発生を抑えるとともに、脂肪肝の人に投与すると肝臓から蓄積した脂肪を排出し、LDLコレステロールの低下や動脈硬化を予防します。イノシトールが不足すると脂肪肝になりやすいため、予防と治療の両方に効果があるとして期待されています。
さらに近年では、脳内の神経伝達物質に、スピーディーに情報を伝えるセカンドメッセンジャーとして働きも期待されています。
特定の精神疾患の改善に効果を示すことも報告されており、現在パニック障害、うつ病状、強迫神経症への効果が確認され、治療へのアプローチが期待されています。
また、精神を安定させる「セロトニン」の効果を高める働きもあります。セロトニンはトリプトファンから作られるのですが、不足すると、気分が不安定になったり寝付きが悪くなったり、日内リズムが乱れることで、自律神経失調症やうつ病などの精神疾患を引き起こすこともあります。それを防ぐためには、イノシトールと、トリプトファンの代謝を促すビタミンB3(ナイアシン)をセットで摂取することがポイントです。
記憶力や学習能力の向上、抜け毛の予防にも効果があるといわれているイノシトールは、初乳にも多く含まれ、乳児にも必要不可欠な栄養素です。多く含む食材は、レバーやビール酵母、牛乳、ホウレンソウやカブの葉などの緑色野菜、トマトやサツマイモ、グリンピースなどの野菜類。オレンジやスイカ、桃、グレープフルーツなどの果実類など。偏食やストレスが多い現代人は、欠乏することも多いため、ライフスタイルや活動量に合わせて至適量の補給をしましょう。
こんな人は摂取を心掛けよう |
▢ 脂肪肝が気になる |
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