なるほど栄養学 現代人のカラダ事情<31>

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日本人の15%が低利用

動脈硬化や認知症にも葉酸を

 前回、「葉酸は妊娠を希望する女性や妊婦に必須」だとお話ししましたが、決してその方々だけに限った栄養素ではありません。実は、動脈硬化や認知症の予防に深く関係している栄養素なのです。

 体内の葉酸が不足するとアミノ酸代謝がスムーズにいかず、血中に「ホモシステイン」という物質の濃度が高くなります。これが血中に増えると、活性酸素が増えて血管に障害ができ、動脈硬化のリスクが高まります。さらに、脳卒中や心筋梗塞など循環器疾患のリスクが高くなるほか、認知症、うつ病、骨粗しょう症などの発症とも関係することが分かっています。

 このやっかいなホモシステインの増加を防ぐには、体内の葉酸レベルを一定以上に保つことが必要です。特に循環器疾患の予防には一日に約300μg以上の葉酸摂取が望ましいと言われています。日本人(成人)の葉酸摂取は一日平均318μgですから、十分に満たしていることになっています。

 しかし、葉酸の生体内での利用効率には個人差が大きく、推奨量を満たしていても、安心できないという意見もあります。遺伝子的に、日本人の15%が葉酸を上手く利用できない体質で、血中のホモシステイン濃度が基準より高いのです。このような体質でも、一日600μg~700μgの葉酸を摂取することで血中の葉酸値レベルが上昇し、濃度を基準レベルに維持できることも分かってきました。

 葉酸は、たんぱく質分解酵素の働きで、「モノグルタミン酸型」に分解されて体内に吸収されます。

 食事由来の葉酸の生体利用率は約50%なのに対し、サプリメントの葉酸は、初めから「モノグルタミン酸型」になっているため、生体利用率は約85%にもなります。

 消化吸収機能が低下している高齢者や、腸からの吸収不良を起こしている人、葉酸の利用効率の悪い遺伝子タイプでは、食品だけでは不足することがあります。抗ガン剤や免疫抑制剤、ピル、非経口栄養剤の使用や、血液透析患者も注意が必要です。

 また、血中ホモシステインの増加を抑えるためには葉酸だけでなく、ビタミンB6、B12も合わせて摂取すると効果的です。

 こんな人も葉酸摂取!

 ▢ 慢性疲労時に
 ▢ 不眠がち
 ▢ ストレスが多い
 ▢ 脱毛に悩んでいる
 ▢ 物忘れが多い
 ▢ 月経不順
 ▢ 貧血ぎみ

 

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