なるほど栄養学 現代人のカラダ事情<10>

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任務は暗号解読!?

タンパク質の工場「リボソーム」

 これまで8回にわたり、タンパク質とアミノ酸についてお話してきました。私たちにとってタンパク質がいかに重要なものなのか、ご理解いただけたかと思います。

 今回は、タンパク質代謝の中心となる「リボソーム」を紹介します。

 リボソームは、アミノ酸からタンパク質を合成する工場と言われ、細胞内の小胞体や細胞内液中に存在しています。近年になって、今まで謎に包まれていたリボソームの立体構造が明らかになり、働きも徐々に解明されてきました。昨年のノーベル化学賞は、リボソームの構造を明らかにした3人の研究者に贈られました。

 リボソームがタンパク質を合成する際、まず「どの種のタンパク質を作るか」という情報を、生命の設計図であるDNAからmRNA(伝令リボ核酸)にコピーします。そしてmRNAとリボソームが結合し、さらにタンパク質の材料となるアミノ酸と結合してタンパク質を作り出します。リボソームは、DNA暗号を解読してタンパク質を合成する、「翻訳」と呼ばれる重要な任務を遂行しているのです。

 しかし、いくらリボソームが翻訳をしても、材料となるアミノ酸が体内になければタンパク質は作れません。仮に、アミノ酸が1種類でも不足すれば、そこで製造はストップしてしまいます。

 その時、合成に使われなかったアミノ酸は分解されエネルギー源として脂肪になります。運動不足の方、活動量が少ない方などは、これが肥満の原因につながります。さらにはアミノ酸バランスの悪い食事を続けていると、栄養不良を助長することになります。毎食、ライフスタイルに適したアミノ酸バランスのよい食生活を送ることが健康維持を支えます。

 高齢者ではリボソーム活性が低下するので、多めのタンパク質摂取を勧めるとの見解も出ています(腎機能が低下している高齢者は制限が必要な時もあります)。

 私たちの命は、直径15から20マイクロメートルという微細な場所で行われる、ダイナミックな働きに支えられているのです。

 リボソームの「翻訳」とは
 ① DNAから、mRNAに「タンパク質の合成情報」をコピーする
 ② mRNAの情報はリボソームに結合する
 ③ mRNAが示す塩基配列(設計図)に従い、アミノ酸を結合
 ④ タンパク質のペプチド結合を形成する

 

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