なるほど栄養学<実践編>それぞれのカラダ事情<3>

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葉酸不足は胎児に影響

妊娠を希望する女性に必要な栄養・パート2

前回も少し説明した「葉酸」ですが、若い女性の多くが不足しているといわれています。ちょっとクドイですが詳しく紹介します。

 葉酸が不足すると、胎児の中枢神経の発達がうまくいかず、「神経管閉鎖障害(二分脊椎症)」という先天異常のリスクが高くなります。

 厚生労働省は、2000年に「神経管閉鎖障害のリスクを低減させるために、妊娠の1ヶ月以上前から妊娠後3カ月までの間、食品からの葉酸摂取に加え、栄養補助食品から1日400㎍(※)の葉酸を取りましょう」と通知しました。

 しかし、実際の日本人女性の葉酸摂取量平均は、20代で250㎍、30代で247㎍と報告されています。成人女性の推奨量、240㎍は満たしていますが、妊婦に必要な400㎍には達していません。

 これまでは主食・主菜・副菜のそろった伝統的な日本食を日常的に食べていれば、不足することはないと考えられてきましたが、外食や加工食品(冷凍食品なども)の利用が多くなると、知らずに不足していることも少なくありません。

 葉酸は吸収効率に差があるだけでなく、遺伝的に日本人の15%が葉酸をうまく利用できないといわれていることも考慮すると、食事と合わせて質の良いサプリメントで補給することも必要でしょう。

 アメリカなど世界52カ国では、国を挙げてパンや米などの穀類に葉酸を添加し、胎児の神経管閉鎖障害の発生頻度を減少させました。

 しかし、日本の発生率は増加傾向にあることが分かっています。これは、葉酸の認知度が低いことが一番の原因。そして胎児の中枢神経が形成される受精後1~2週間目から葉酸が必要なのですが、妊娠に気づいたときには、すでに受精後1カ月以上経過していることも多いことが挙げられます。

 神経管閉鎖障害を防ぐには、葉酸だけでなくビタミンB12も必要ですから、一緒に摂取しましょう。

 葉酸はほかにも、心筋梗塞や脳梗塞、認知症、骨粗しょう症の予防に有効であることも確認されています。さらには精神の安定や睡眠に影響を及ぼす「セロトニン」という物質を作るのにも不可欠です。食事調査の結果などからは葉酸摂取の少ない人にうつ症状が多く見られているとの報告もあります。

 これほど大切は葉酸ですが、残念ながら体内で合成できないため、意識して摂取する必要があるのです。

 葉酸を多く含む食品(100g当たり)

 葉酸を多く含む食材は、菜の花、春菊、枝豆、グリーンアスパラ、モロヘイヤ、ブロッコリー、ほうれん草、パセリ、アシタバ、などの野菜類です。レバーやホタテ、カキなどの貝類にも多く含まれています。

 菜の花・・・340㎍
 春菊・・・190㎍
 枝豆・・・320㎍
 グリーンアスパラ(ゆで)・・・180㎍
 モロヘイヤ・・・250㎍
 ブロッコリー(ゆで)・・・120㎍
 ホウレンソウ・・・210㎍
 豚レバー・・・810㎍
 ホタテ貝・・・87㎍
 牡蠣(カキ)・・・40㎍ 

 ※㎍(マイクログラム)=1/1000㎎

 

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