なるほど栄養学 現代人のカラダ事情<25>

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うつなどの改善にも

近年注目される「ナイアシン」

 ナイアシンが発見されたのは、1937年とごく最近です。ペラグラという病気(イタリア語で「荒れた皮膚」に由来する)が、ナイアシン欠乏であることが明らかになったことで発見されました。

 ナイアシン不足が引き起こす、このペラグラは皮膚症状や下痢、不安やうつ状態、幻覚などが表れることもありました、南米などのトウモロコシを主食にしている地域で起こりやすい病気で、トウモロコシにナイアシンの材料であるトリプトファンが少ないのがその原因だったのです。

 そして近年、カナダの精神科医ホッファーらが、うつや統合失調症の治療にナイアシンが有効であるとし、ナイアシンの多量投与(3000㎎/日)をすることで、多くの治療結果を積み重ねてきたことから、今では「ビタミン界のヒーロー」となっています。

 それまでナイアシンは、人の体内に豊富に存在していて、その一部は体内で生合成できるので、あえて食品から補給する必要ではないと考えられていましたが、実際には非常に不足しやすい栄養素であることが分かっています。特にストレスの多い現代人は、慢性的なナイアシン欠乏状態であるともいわれています。

 ナイアシンは体内で合成できるとはいえ、材料となる必須アミノ酸の「トリプトファン」60㎎から、わずか1㎎しか合成できません。ナイアシンの不足分をトリプトファンからの合成だけで補うと、タンパク質のその他の働きが低下する恐れがあるため、食物から補給することが望ましいのです。

 ナイアシンは炭水化物やタンパク質、脂質を代謝するための酵素の補酵素として働きます。そのほかの働きは別表を参考にしてください。体内のナイアシンが不足すると体の代謝が十分に行われなくなり、エネルギー不足や神経症状などさまざまな症状が起こります。

 新鮮な肉や卵、豆類が少ない食事を取り続けるとナイアシン欠乏を招くことになります。また、アルコール常飲者は慢性的なナイアシン欠乏が疑われるので注意しましょう。取り方などは次回説明します。

 ナイアシンの働き

 ① 神経伝達物質のセロトニン合成
 ② 脳の神経伝達物資の調整に関与
 ③ 幻聴や幻覚を抑える(アドレナリンの酸化を抑える)
 ④ コレステロール合成の抑制
 ⑤ アルコールの代謝に関与し、二日酔いを予防する(アセトアルデヒドを分解)
 ⑥ 血糖調整作用
 ⑦ ガン治療に良い働きをする(ビタミンCとの相乗作用によって発ガンを抑制)
 ⑧ 血管拡張効果(狭心症、心筋梗塞や脳梗塞の予後を改善)

 

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