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naruhodo第4回
タンパク栄養について③

2016,05,25 <vol 4>

 これまで、再三にわたってタンパク貿を十分摂取するようにと書いてきました。しかし「意識してタンパク質を食べているのに、身になってない」「取れてないと言われた」という方もいらっしゃるのではないでしょうか。そのメカニズムについてお話します。

摂取したタンパク質は胃液、すい液、腸液などの消化酵素の働きによって分解され、アミノ酸となって小賜で吸収されます。吸収されたアミノ酸は肝臓へ運ばれ、そこで組織タンパグ質や酵素、ホルモンなどに合成されます。消化酵素もアミノ酸から作られるため、タンパク質やアミノ酸が不足している人ほど消化酵素も不足し、タンパク質が低下するという悪循環が起こります。

また、近年話題となっているピロリ菌感染者、萎縮胃の方、胃酸抑制剤を服用している分、ストレスの多い方などは胃の働きが悪く、タンパク質をきちんと消化することが難しくなってきます。タンパク質不足を指摘される方は、消化器のチェックをした方が良いでしょう。特にピロリ菌の有無は、どなたも確認しておく必要があります。ピロリ菌感染者は胃粘膜トラブルのため胃粘膜状態が悪化しやすく、タンパク質をはじめミネラル類の消化吸収能が低下します。そのため多彩な症状を訴える方が少なくありません。

さらに現代人は睡眠不足、食べ過ぎ、過労およびストレスなどの影響でライフスタイルが乱れ、自律神経の働きが崩れることにより、消化機能が低下しています。タンパク質の消化、吸収、代謝の良し悪しは、摂取量はもちろんのこと、消火器の状態、規削正しい生活、適度な運動などが関与します。また、「腸は第2の脳」と言われているように、ストレスコントロールも合わせて考えなくてはいけません。

摂取したタンパク質が上手に消化吸収されていない場合は、

  • 腹部膨満感(おなかが張る)
  • ガスや便に臭気がある
  • 軟便または下痢をする
  • 舌に白苔がある(早朝)

などの症状がでてきます。

■食べたタンパク質はどのようにして消化され、吸収されるのでしょう?

食べたタンパク質は、ハサミ(消化酵素)で切られて小さなペプタイドやアミノ酸に分解され、吸収されます。

タンパク質を細かく消化してくれるハサミ(消化酵素、ペプシンやトリプシンなど)もアミノ酸からつくられます。そのため、タンパク質が足りない人ほど消化酵素も足りなくなり、タンパク質を消化しにくくなる悪循環に陥ったりします。
20160525

■タンパク質の動的平衡

20世紀の初めまで、からだをつくるタンパク質は、食事で食べるタンパク質とは関係のない、別のものであると考えられていました。しかし、1930年代にドイツ人のシェーンハイマーらの実験によって、からだをつくるアミノ酸が絶えず入れ替わっていることが明らかとなりました。この現象をタンパク質の代謝回転といいます。

そしてタンパク質が代謝回転するたびに、食べたタンパク質のアミノ酸が、からだの中にあるタンパク質を構成していたアミノ酸と少しずつ交代して入れ替わっていきます。見た目は変わらずとも中身が変わっていくこの状態を「動的平衡」と呼びます。

この動的平衡は細胞によって期間が違うものの、速いものでは0.7日というものすごい速さで変わっていきます。これが毎日十分な量のタンパク質を食べなければならない理由です。そして、その必要量は、個人やその人の置かれている状況によってそれぞれ異なってきます。

しかしこのことはまた、日々いいタンパク質を充分量食べることで、新しい自分に生まれ変わることができるという人体の素晴らしい可能性を示しています。

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